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第1回:電子投票はなぜ儲からないのか - 普及しない理由と「例外」の構造

スマートフォン 簡単投票システム

電子投票はなぜ儲からないのか - 普及しない理由と「例外」の構造

電子投票という言葉には、未来的で革新的な響きがあります。
しかしシステム業界および実務の世界では、むしろ逆の評価が定着しています。

『電子投票は儲からない』

これは誇張ではなく、業界に長く関わる人ほど共有している現実的な認識です。
本記事では、その理由を構造的に整理します。

電子投票が普及しない本当の理由

電子投票が普及しない理由として、一般的には次のような点が挙げられます。

  • セキュリティの不安
  • 不正の懸念
  • 技術的な難しさ

しかし実務の観点から見ると、本質は異なります。
最大の理由は「ビジネスとして成立しない構造」にあります。

つまり、

  • 技術ではなく市場構造
  • セキュリティではなく運用設計

が問題の核心です。

公職選挙における電子投票の現実

世界的に見ても、公職選挙向け電子投票ビジネスは極めて難しい領域です。
代表例として、かつて世界トップクラスの電子投票企業であった Scytl があります。
同社は20カ国以上で導入実績を持ちながら、

  • 2020年:破産申請
  • その後:買収・再編
  • 直近:再び財務不安定

という経緯を辿っています。

また米国では、
Dominion Voting Systems
Smartmatic
政治問題や訴訟に巻き込まれるなど
ビジネスとしての不安定さが常に付きまといます。

なぜ電子投票は儲からないのか

理由はシンプルです。

  • 選挙は数年に一度しか行われない
  • 一度導入すると長期間更新されない
  • 政治リスクが極めて高い
  • 国ごとに制度が異なり標準化できない
  • セキュリティ要求が過剰に高い

その結果、開発コストは高く、継続収益は生まれにくいという構造になります。
つまり電子投票は、技術的に難しいだけでなく、ビジネスとして成立しにくい領域です。

そもそも選挙はハイテクである必要があるのか

ここで重要なのは、現実の選挙はそこまでハイテクではないという事実です。
日本をはじめ多くの国では、

  • 紙の投票用紙
  • 人による確認
  • シンプルな開票プロセス

によって選挙が成立しています。
つまり本質は、技術ではなく、運用と制度にあります。

しかし電子投票はしばしば、

  • 暗号技術
  • ブロックチェーン
  • 複雑なセキュリティ設計

に偏りすぎます。
これがコストを押し上げ、結果としてビジネスを成立しにくくしています。

普及しない理由

投票UIは氷山の一角。コストと価値の中心は“運営レイヤ”にある

 

投票システムの本質は「運営」

電子投票というと、投票画面やUIに注目が集まりがちです。
しかし実務の観点では、投票システムの本体は「運営そのもの」です。

必要とされるのは、

  • 投票権の管理
  • 重複投票の防止
  • 匿名性の担保
  • 検証可能性
  • 監査対応
  • 法制度への適合

といった、一連のプロセスです。
投票は一瞬ですが、運営は継続的な仕組みです。

市場構造の違い

電子投票には、いくつかの市場があります。

  • 公職選挙:低頻度・高リスク
  • 株主議決権:巨大だが制度的に閉じた市場
  • 組織意思決定:高頻度・未整備の市場

株主議決権の領域では、
Broadridge Financial Solutions

事実上のインフラとして機能しています。

しかしこの市場は、
制度とネットワークによって形成されたインフラ市場であり、
プロダクトだけで参入できる構造ではありません。

e投票」という例外

こうした中で、「e投票」は異なるアプローチを取っています。

  • 技術ではなく業務フローを最適化
  • 運営全体を設計
  • 高頻度の意思決定市場を対象

つまり、電子投票を「技術」ではなく「運営インフラ」として捉えています。

その結果、

  • 実際に使われ続け
  • 継続的に契約され
  • そして黒字化している

という状態を実現しています。

結論

電子投票は、基本的に儲からない商売です。
これは技術の問題ではなく、市場構造の問題です。

しかしその中で、
運営を設計し、適切な市場を選び、継続利用される仕組みを構築できれば成立します。

そして、
e投票」はその数少ない例外として、すでに安定稼働している存在です。

電子投票の本質は、「どう作るか」ではなく「どう運用するか」にあります。


次回予告

2回では、
「電子投票=危険」というセキュリティ神話は本当か?
について、実務の観点から解説します。

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